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Tomamu
Hokkaidō

Wakaranai Lodgewakaranai

オリジン・ストーリー:ロッジ

※この物語は、わからないロッジのはじまりとして書かれたものです。

はじまりの話

冬の森で、フクロウは静かに木にとまり、

下の様子を見ていました。

ロッジの窓のそばでは、

タヌキがそっと、古い窓に手をかけています。

雪の上では、ネコが身を低くして、

その様子をじっと見ていました。

このロッジは、長いあいだ眠っていました。

だから、小さな気配ひとつでも、

森の生きものたちは気づいてしまいます。

場所というものには、

理由のない力が宿ることがあります。

人はそれに気づかないこともあれば、

かすかに触れることもあります。

そして、まれに、

その中にすっと入り込んでしまう者もいます。

フクロウも、ネコも、タヌキも、

ここに住んでいました。

今、彼らはその扉を、

もう一度ひらこうとしていました。


タヌキは窓を開け、

静かに中へ入りました。

外は真冬。

空気が変わるのがわかります。

新聞紙を丸め、

薪ストーブに入れ、

そばにあった焚き付けを重ねます。

マッチを擦ると、

火はすぐに応えました。

ぱちぱちと音を立てながら、

ロッジの奥へ、あたたかさが戻っていきます。

火が育つと、

家はゆっくりと目を覚まし始めました。


その気配に引き寄せられて、

ネコは雪を渡り、

軽く窓を越えて中へ入ります。

ストーブの前に座り、

火を見つめ、

満足そうに身体を伸ばしました。

家も、静かに応えます。


フクロウは、

もう待てなくなり、

窓から入り、

椅子の背にとまりました。

火はさらに明るくなり、

空間がひらきます。

ロッジは、目を覚ましました。


ここから、わたしたちの物語が始まります。

この場所をつくったのは、

わたしたちではありません。

わたしたちは、

呼ばれてここへ来ました。

遠くで聞こえていた声。

それが、ここだったのだと、

あとから気づいたのです。

ロッジは再び眠っていました。

火は消え、

窓は閉じられていました。

それでも、

何かが、確かに残っていました。


その夜、

わたしたちは、

同じように火を入れました。

紙が燃え、

薪が鳴り、

ストーブがきしみます。

火は、丸く、

あたたかな光になり、

家に戻ってきました。

床に座り、

火を見つめていると、

時間はほどけていきます。

そのとき、

窓を叩く、小さな音がしました。


タヌキが、

雪をまとって立っていました。

懐から、

銅のやかんを取り出し、

ストーブにのせます。

すぐに湯気が立ちのぼりました。

口笛がひとつ鳴り、

ネコが現れ、

羽音のあとに、

フクロウがやってきます。

タヌキは、

茶葉を湯に落とし、

六つの湯呑みを並べました。

ひとつは、ストーブの上に。

ロッジは、

低く、満足そうに鳴りました。


驚きはありませんでした。

世界が、そうあるべき姿で

動いているのを

見ていただけでした。

そのとき、わかりました。

わたしたちは、

この家の持ち主ではない。

火を絶やさず、

声を通し、

この場所が語り続けるのを

見守る者なのだと。


物語は、

少しずつ書かれていきます。

一つの行動が、一行になり、

一つの笑いが、ひとつの言葉になります。

壁も、椅子も、

食事も、雪の日も。

はじまりがわからなかったように、

終わりも、わかりません。

それで、いいのです。

わからないロッジ